……桜太の名字?
桜太、ここに住んでいたんだ。
明らかに学校より遠いのに。
それとも、赤の他人?
「……アヤメ?」
名前を呼ばれ、ビクッと反応してからぎこちなく振り向く。
オートロック式の自動ドアから出てきたのは、桜太だった。
桜太だとわかったのか、ユキくんがあたしの腕から地面に下り
「にゃあっ」と桜太の足にすり寄った。
「……何でこんな所にいるんだ?」
「…………」
「アヤメ」
「……ごめんなさい」
「謝るだけじゃわからねぇよ。
何でここにいるのかちゃんと教えろ」
桜太の声は焦っているようにも、怒っているようにも聞こえた。
あたしは声を失ったかのように、縮こまって黙った。
「……あら、桜太くん」