お姉ちゃんはパッと顔を輝かせ、あたし玄関に突っ走って行った。
あたしを突き倒してまで。
あたしはぶつけたお尻をさすりながら玄関へ戻る。
「風太(ふうた)さん!
来るなら連絡ちょうだいよ~」
朝だと言うのに、お姉ちゃんはポストの前で旦那さんに抱きついている。
朝からこんなイチャイチャシーン見たくないんだけど…。
「ごめんね。
スマホの充電器、一緒に荷物で送っちゃったみたいで」
にっこり微笑みお姉ちゃんの頭を撫でる、何だか抜けている旦那さん。
あたしがその光景に釘付けになっているのを見て、お姉ちゃんが嬉しそうに話し出す。
「彼は望月風太さん。
とぉってもかっこいいんだからぁ~!」
「改めまして、望月風太です。
いきなりだったけど、これからよろしくね」
「河西彩愛です、こちらこそよろしくお願いします」
「ねぇ風太さん、弟くんは?」
「弟は学校に行ったよ」
「会ってみたかったなぁ。
風太さんの弟なら、さぞかし素敵だもの!」
「別に素敵じゃないよ。
むしろちょっと困った弟だったりするし」
「会えるのが楽しみだわ。
あっアヤメ、あなた遅刻するでしょ!
早く行きなさい」
「あっはーい!」
あたしは風太さんに頭を下げ、学校へ向かう道を歩き出した。