運動神経が良くて、優秀な、人受けの良い顔を持つ男。
それが俺。
自分から言わなくても、次第に人は集まってきた。
個性がない、ただキャアキャア騒ぐだけの女。
必要な時だけ呼ぶ、俺を使い捨て道具だと思う男。
成績と外見、外面だけ見て判断する大人。
俺の周りはこの3種類しかいなかった。
ふとした瞬間に、普段押し殺すようにしている黒い感情が出てきても。
返ってくる言葉は「素敵」「かっこいい」「黒い望月桜太も良い」。
俺を褒めるマニュアルでもあるのか、と一時期本気で疑ったほど、
周りの奴らは全て…そう全て、同じ反応だった。
『そんな人生じゃ、つまらないよ』
ある時現れた、一風変わった女。
俺と似たような道を歩んできた、変な奴。
『…キミには、関係ないはずだよね?』
『確かにそうかも。
だけど、そうやって誰にでも良い顔するの、良くないよ』
『…キミだって、そうだよね?』
『だけどわたしには、本音で話せる人がいる。
ねぇ、あんたにはいるの?』
……いたかな、そんな奴。
俺はいつだって、誰でも、嘘だったんじゃないか?
俺は嘘の…塊だった。