河西彩愛という、一発では読めないような名前を持つアイツは。
アイツによく似ていた。
『おかけになった番号は、現在使われておりません――』
全身に響くように聞こえる、機械の女性の声。
俺は溜息をついて、教室から体育館に戻った。
「ヅッキー遅ぇよ!」
扉を開けると、男女関係なく多くのクラスメイトが集まってきた。
変わらない目にイラッとしたけど、俺は笑顔を作った。
「ごめん遅くなって。今試合中?」
「ああ!
ヅッキー入れよ!」
「……わかった」
自分たちだけでやれねぇのかよ。
そう考えたけど、すぐに押し殺す。
中断していた試合が始まり、俺はいつものようにボールを上手く扱った。
生まれつき、運動神経は良かった。
努力しなくても、誰かを見ていれば何だって出来た。
唯一努力した覚えがあるのは、勉強だけ。
それも真面目に授業を聞いていれば、何だって出来ていた。