「俺だってサボることぐらいある」
「表向きは真面目で紳士な王子様なのに!?」
「…どこのお伽噺だ。
お前の脳内はいつだってあのネズミのテーマパーク状態か」
「あっ良いなぁネズミのテーマパーク。
久しぶりに胡桃と行きたいなぁ」
「馬鹿!このドアホ女!!」
「お姉ちゃんとでも良いよねぇ。
あたしね、お姉ちゃんとふたりで行ったことあるんだよ」
「馬鹿。
お前の話なんて聞いてない」
「もちもちは行ったことあるの?」
「…ウザい。関係ねぇだろ」
…どうやらもちもち、不機嫌だ。
「もちもち、サボってまであたしに何の用事?」
「お前に用事なんてねぇよ。…と言いたいところだけど、ある」
「何?」
「お前、今後一切俺のこともちもちって呼ぶな」
「は!?」
「呼ぶなら桜太にしろ。
俺はもちもちって名前じゃねぇよ」
「…もちもちで慣れちゃったよ」
「桜太、そう呼べ。
呼ばねぇと…どうなるかわかるよな?」
「ハイ、呼バセテイタダキマス」
ニヤリなんて怪しく微笑むものだから。
あたしはガクガクと頷いた。
「合格、アヤメ」
急に優しい表情になったもちもち、改め桜太は。
ぽんぽんとあたしの頭を撫でた。
桜太は、
あたしをドキッとさせる天才だ。