「それじゃ俺、戻るわ」
何事もなかったかのように、行ってしまった桜太。
…どことなく、その後姿は軽そうに見えた。
「…あたし、少しでも役に立てたかなぁ」
唇に手を触れる。
桜太とあたし…キス、しちゃった。
初めて同居人が桜太だって知った日も、キスしたけど。
比べ物にならないぐらい、激しいキスだった。
「チャイム鳴ったら戻ろうっと」
あたしは時計を見てそう決め、ゴロンッとベッドに横になった。
そして、眠りに落ちた。
『おかけになった番号は、現在使われておりません―――』
使われなくなった、電話番号。
だけど大事に保存されている。
<白井真幸>
一生、かけられないまま。