花が咲き乱れ、太陽が暖かく包み込む街が広がるソラフィアの国。
 
「リール姫様、今日も素敵な御召し物で」
「ありがとう。今日は陽気も良いし、街をたくさん歩いて、皆の顔を見て行かないとっ」
「おはようございます。リール姫様」
「リンゴをお召し上がりになりませんか?リール姫様」
「皆、おはよう。そのリンゴ頂くわ」
「姫様! 一緒に歌を歌って!」
「リール姫様~、お花を見に行きませんか?」
「はいはい、待っててね。順番に皆お遊びしましょう」

 そんな平和な国の頂点に君臨するのは、リール姫。
 金色の美しい長髪に、桃色の愛らしい瞳で、行き交う人全てを魅了する美しさは、国一番だろう。
 だが、リールが人々に好かれるのは美しさ故にだけではない。リールの持つきさくな性格や、優しさが親しみを持たせているようだ。 
 リールは美しく、優しいだけではない。幼い頃から剣術を学び、学問にも優れたまさに才色兼備の天才的な才能を持つ。
 
 リールは生まれながらにして国の期待を背負ってきた。
 リールの母親は体が弱く、リール1人さえも産むのがやっとの体。そして、出産後まもなく命を落とした。
 父親も流行りの病でリールが幼い頃に他界している。 
 そんなこんなで国中は混乱に陥りかけた中、リールは天才的な才能によって国をさばき人々の生活を守り抜いてきた。
 国の者は心からリールを慕い、敬い、ここまでついて来ていたのだ。
 
 
 …………と、これは50年も前の話……

 
「……良いのよ。皆が幸せなら…」

 リールの頬には一筋の透明な涙が伝った。