第5章 ~明かされる過去~

玲央side

昨日の佑香には驚いた
珍しく大声で怒鳴った佑香

そんなに深刻なんだな

「佐藤玲央くんだね」

「はい」

「僕は佑香ちゃんの主治医の森です」
...主治医...??
なんだよ主治医って

「佑香は今どこですか?!」

「落ち着いて、佐藤くん」
「佑香ちゃんは検査中だよ
佑香ちゃんの事は僕から話す様に言われててね」

「わかりました」

「佑香ちゃんの親の事知ってるね」

「はい」

「佑香ちゃんの父親は事故で亡くなった
母親とふたりで暮らしてたんだか、父親の事で体調を崩すことが増えてついに倒れてね」

「っ。その時佑香は」

「佑香ちゃんは幼稚園児なのに大人でね、母親をいつも支えていて病院に連れてきたりしてね」

「祖母とかいなかったんですか」

「祖母とは無縁だったそうだよ
それで母親はうつ病になってね、声も出せなくなったんだ
佑香ちゃんはそれから笑わなくなってね」

「でも佑香今すごく元気...」

「うん。佑香ちゃんなりの恩返しだよ」

「恩返し...」

「母親は声を出せるようにリハビリをしてなんとか小さい声は出せるようになった
小、中って佑香ちゃんあまり学校に行かずにお見舞い来て面倒見ていたよ」

「高校...行けたのは?」

「高校は私の知り合いに事情を説明して入れたんだよ、だから佑香ちゃん勉強苦手でね」

「...はい」

「それで母親はうつ病になってから体が益々弱くなってね癌になってしまったんだよ
余命宣告の1週間前に母親が佑香ちゃんに話をしたんだ」

「余命宣告って、もっと早く...」

「そんなんだが、母親はなにも言わなくてね」

「っ。」

「母親は佑香ちゃんにこう言ったんだ」
ーーーー
『...佑香』
『なに??お母さん』
『ごめんね、弱くて...』
『...ううん。仕方ないよ
お父さんの事があったんだもん』

『それは佑香も同じでしょう』
『...っ。』
『佑香、もっとお母さん頼っていいのよ
お母さん弱いから言わないだろうけど佑香が笑えなくなって泣かなくなったのはお父さんとお母さんのせいよね』
『違う!私は大丈夫だもん』

『それでも私は佑香が強く生きてるって分かって嬉しかったわ、おかげでうつ病は治ったもの、ありがとう』

『それでね佑香。
お母さんもう長くないでしょう
だから最後は佑香の笑顔が見たい

佑香笑って??
もしも佑香の周りで笑えない子がいたら助けてあげてね』
ーーー
「一五一句あってる訳じゃないが、こう言ったそうでそれから数分後に容態が急変して佑香ちゃんの母親は亡くなった」

「ぇ...。」

「佑香ちゃんは笑えなかったらしくてね
今でも気にしてるんだ、母親に笑顔を見せれなかった事を。だから佑香ちゃんはそれからよく笑う子になったんだよ」

「そうだったんですか...
佑香は病気ですか」

「佑香ちゃんは母親と同じ癌だよ
早期発見だから治る可能性がある
けど佑香ちゃんはもう笑えないかもしれないね」

「なんで、ですか」

「母親への恩返し...約束は笑う事と人を笑わせる事だからねもう疲れたって言っててね
もう母親の所へ行きたいって言ってるんだ」

「そん...な」

「これで佑香ちゃんの話は終わりだよ」


.....佑香にそんな過去があったなんて
.....俺は佑香に何が出来る