そんな話をしていると、坊主の一人が急いで三蔵のもとにきた。
「玄奘様!唐の帝が玄奘様の様子を見に来たと、遙々長安からいらっしゃいました。」
「おぉ、帝が!お通ししなさい。」
「玄奘殿!随分賑やかだな。」
「帝!お元気そうで何よりでございます。」
「いやいや、ご丁寧に悟空殿!悟浄殿!八戒殿まで!みんなそろって楽しそうだな。」
「帝も元気そうでなによりです。」
三蔵一行はその場に跪いた。
「いやいや、顔をあげてくれ。途中からなんだが、チンも仲間にいれてもらえんかな?」
「ええ、勿論でございます。」
三蔵一行の宴会に唐の帝が加わり朝までドンチャン騒ぎだった。
そして、朝がくるとみんな悟浄、八戒と帝は帰ったのだった。
「お師匠さん、昨日は楽しかったですね。」
「そうだなぁ、みんなそろって楽しかったな。」
「帝も来ましたね。」
「まさか、来られるとはおもいませんでしたよ。」
「お師匠さんは、みんなから愛され慕われているのですね。」
「そうなのかもしれないな。私は幸せものだ。」
「それは、よかったです。」
「悟空。」
「なんですか?お師匠さん」
「いつも、私を守ってくれてありがとう。お前には本当に助けられてばかりだ。」
「なにをおっしゃいます。お師匠さん。これからも私がお師匠さんを守っていきますんで、安心してくださいよ。お師匠さん!」
「悟空。お前は本当に優しい心をもっている、お前が天界を暴れ回ったのも家来のためにおいしいものを美味しい酒を味わってほしかったからなのだろうな。お前は人思いな奴だな。旅をしていた頃も悟浄、八戒のことを一番気に掛けていたな。自分の事よりも私たちのことを気に掛けてくれた。
お前は本当に面倒見のいい奴だったな。」
「お師匠さんにそう言われるとてれますな。」
「お前のお陰だ、私が天竺に無事にたどり着けたのも。私がこうやって生きてこれたのもみんなお前のおかげだ。本当にありがとう。」
「なにを水臭いことをおっしゃいます。お師匠さん。これからもお師匠さんお師匠さんの身の回りの世話をさせていただきますよ。」
「悟空、本当にありがとう、、、」
三蔵はそう言って目をつぶった。手は力が抜けたようにだらっとなっていた。
そして、そのまま目を覚ますことはなかった。
「お師匠さん?あれ?お師匠さん!お師匠さん!起きてください!お師匠さん!」
三蔵はそのまま息を引き取ったのだった。
玄奘三蔵、64歳一番弟子である悟空とその妻凛々に見守られながら、この世を去ったのだった。
三蔵は苦しい顔をしてるというよりかむしろ笑顔で死んでいったのだった。
悟空はこの時初めて悲しみということを学んだのだった。そして、生まれて初めて一晩中ないたのだった。
三蔵を抱きかかえたまま、涙が止まらなかった。
この玄奘三蔵の死が世の中を変えることになるとはこのときはみんな予想もしなかっただろう。