ヘリの運転は玲央がやるそうだ。


というより車体には誰もいなかった。


「俺以外に誰連れてくるんだよ?夏菜は家の仕事手伝ってるし、ユリはそもそも高澤家に来たら騒ぎになるだろう。交通手段だって車で行くわけにはいかないだろ、桜井家無断訪問ってことになるし。」


いや、ヘリで来ても無断訪問だろ。


ようは玲央は体のいいパシリか………。


苦労してんな。


「で、今日俺を呼んだ理由は何だ?俺だって会社の業務担っていて案外忙しいの分かってんだろうな。」


「それはもちろん。北原に確認したしな。」


はあ?北原?


俺にとっちゃあいつはあんまり信用ならねえって考えてんだけど!


「なんで北原?アイツ信用なるのか?」


イラっとした声が出てしまったがしょうがないだろう。


「はあ?何言ってんだお前。」


後ろをパッと振り向いてぽかーんとした顔。


っつーか運転中だろ!


車体は全く揺れなかったからコイツ相当器用なことしやがる。


「葵。」


はあっと大きくため息を1つ。


吐きたいのはこっちだよ。


「周りの人間をよく見ろ、よく調べろ。先入観か態度でお前人の好み決めてんだろ。まさかお前………。」


ゴオオっと玲央から冷気が吹き荒れた。


「ユリを見た目で判断して付き合うって決めたんじゃねえだろうな………?」


「な訳あるか!」