「山田悠真くんだ。お父さんの仕事の関係で転校してきたそうだ。みんな仲良くな」
ぼーっと窓の外を眺めてた深雪は転校生と聞いて、先生の方を見た。
そしてはーっと大きなため息をついた。
それは、深雪の理想の転校生像と大きく、それこそ正反対くらいにかけ離れていたからだ。
ぼさっとした髪、黒渕のメガネ、細めてるのかもともとなのかしょぼしょぼとした目、鼻はしゅっとしてるのにすごい猫背。
せめて初日くらい髪整えてきたらいいのに。
深雪はまたゆっくりと窓に視線をもどした。
しかしまた転校生の方に目をやった。
深雪の横の席は空いている。
もしやーと思って先生をじっと見つめて次の言葉を待った。
「席は星川の横な。星川、仲良くしてやれよ」
私はまたはーっと大きなため息をついた。
ダメだ!こんな暗かったら転校生君との間に大きな壁ができちゃう。
そうだよ。所詮転校生なんてこんなもんだよ!理想の転校生なんてものはまんがだけの世界だよ!
さんざん失礼なことを頭に並べたあと、
「山田くんだよね。私、星川深雪だよ。よろしくね」
とすばらしい笑顔で話しかけた。
のだが、転校生君は私に笑顔を返すどころかこちらに目を向けもしなかったのだ。
やり場のなくした私の笑顔を足元に落としながら、またしても私ははーっと大きな大きなため息をついたのだった。