気を付けて歩っていたものの、案の定氷の段差の所でヒールが見事にひっかかり、あたしはド派手にその場に転んだ。


手を少し擦りむいたので身体は済んだけれど、目の前に散乱する食材。

しかも袋は大きな穴があいていた。


「どうしよ…」


道を歩く人が見ているけどそんなのはどうでも良く、あたしはどうするべきかを考えていた。


「もしかして、千佳…ちゃん?」


散乱した食材を拾っていると、そんな声が聞こえた気がして顔を上げると目の前には龍平くんがいた。


「やっぱり千佳ちゃんだ!どうしたの?こんなとこで」


まさか知り合いにこんな所を見られるとは…。


「転んじゃって。袋やぶけちゃったの」


恥ずかしくて顔から火が出そうになる。

彼氏の友達にこんな所を見られる程の恥はない。


「立てる?俺も手伝うから手で持って家まで運ぶよ」


そう言ってしゃがんで次々と食材を腕の中に入れていく。


あたしも、こればかりはお言葉に甘えて頼ることにした。



龍平のおかげでなんとかあたしは食材を家まで運ぶことが出来た。


「ありがとう龍平くん。本当に助かったよ」


「ううん。困った時は誰かに頼んなくちゃダメだよ?じゃあまたね!悠によろしく」


そう言って部屋を出てこうとするけどせっかくだと思い、あたしはウチでご飯を食べてもらうことにした。



「千佳ちゃん〜このDVD見てもい?」


「うん」


龍平くんはやっぱり龍平らしくてどこにいても自由だ。今は悠の家だから尚更なのかもだけれど。