俺の一人暮らしに疑問を持っていた千佳に、俺は細かくまではいかないけどこれまでにあったことを話した。
千佳は話を聞くとまた、あの瞳をした。
にしても千佳は俺のことをあんたって呼ぶから原田か悠って呼べと迫ると悠と呼ぶと約束した。
これだけでも距離が縮まった気分の俺。
ふと時計を見ると9時半でそろそろ帰えることにした。
千佳に案内を頼み、歩き出すと後ろを遠慮がちに歩く千佳。
癖で上着のポケットに手を入れると千佳に返そうと思ってて忘れてたシャーペンがあった。
「これ、返すの忘れてた」
千佳はシャーペンを受け取ると
「そういえばあの時、なんであたしに貸してなんて言ったの?」
なんて事を聞いてきた。
「あ〜だって隣の女、なんか嫌だから。それにクセェし」
これもこれで事実だ。でも千佳が気になってたからっていうのも少しあったけど秘密。
千佳は納得した様子でそのまま会話は途切れた。
そのままお互い話題を持ち出す訳でもなく、千佳の案内通りに行くと一軒のアパートに着いた。
ここまででいい。と千佳はアパートの階段を登ってく。
なんとなく、俺は千佳が部屋に入るまで見送ろうと思って。
「千佳!」
千佳は階段の上から俺を見下ろす。
「また明日な」
やっぱり千佳は返事をしなく、そのまま部屋に入っていった。
俺も来た道を返し、今日の事全てを思い出す。
人を避けて過ごそうと思っていたのに
悲しい瞳をして、全く気持ちが読めないけど素直な紺野千佳に心が惹かれてしまった。
そんな紺野千佳が俺の部屋に来て名前を呼び合える様になった。
今日1日で紺野千佳が頭から離れなくなった。
俺が家に着くと時計は10時より少し前。
シャワーを浴び、準備を済ませ俺はベットに潜り瞼を閉じた。