午後の授業も終わって鞄から折り畳み傘を出して玄関に向かった。

下駄箱の前には困ったように立っている千佳がいた。


きっと、傘がないのだろう。


俺は勇気を振り絞って千佳に近付く。

その気配に千佳も気付いたのか、ゆっくりとその大きな瞳をこっちに向ける。


「傘…ねえの?」


そう声を掛けると千佳は下を向むいて

「…そう、だけど…」


と、小さな声で呟く。


「何でお前いっつも俺と話す時目逸らすわけ?」

疑問に思っていた心の声を千佳にぶつけて、俯く千佳の顔を覗き込もうとした時、千佳は俺を避けるように後ろに下がった。



早速俺のこと嫌いすぎだろ。



「あたし、人間に興味ないから」


まただ。


綺麗な瞳なのにどこか悲しくて寂しそうな瞳。



今にも泣きそうな瞳で俺を睨みつけると千佳は雨の中走って行ってしまった。