あと少しで昼休みが終わるという時にあのケバ女が席に着き、あの口調で話し出す。


この女の話なんて耳を傾けてもいなかった。

ただ俺の頭の中は、後ろの女がどこに行ったかが気になっていた。


名前が知りたくて。



その時俺はひらめいた。



名前ならこのケバ女に聞けばいい。


「あのさ、俺の後ろの席のやつって名前何?」


はじめて俺がまともにコイツに口を開いた。

それなのに他の女のことなのが気に食わないのかケバ女の元々ブサイクな顔が更に膨れ上がってブサイクになる。


「紺野千佳。全然誰とも話さないでいっつも一人でいるインキャだよぉ〜」


俺はふーんと返事を返す。



--- 紺野千佳。



昼休みが終わるチャイムが鳴ると、眠そうに目をこする千佳が教室に戻って席に着く。


俺はあれからずっと携帯をいじっていた。
こんなケバ女のマイブームだか自己紹介なんて聞く必要ない。


さすがに俺のそんな態度に嫌気が指したのか、ケバ女が千佳に助けを求めていた。


さっきまでインキャだの何だの言ってたくせになんだこいつは。


そんな千佳は優しくケバ女に接していた。


千佳に説得され、反省したのかケバ女は黙って席に着いた。



そしてまた窓の外を見る千佳。



その横顔はとても綺麗で見とれてしまうくらいだ。



その頃、外は大雨だった。