授業が始まり、俺は筆入れを持ってくるのを忘れてた事に気付いた。


隣の女を見ると、授業を全く聞いていなくて長い巻き髪を指でクルクルといじっていた。


この女の世話にはなりたくねえな…。


後ろの女に借りよう。


後ろを見ると相変わらずこの女は窓の外をみていた。


借りようにも、名前が分からない。


俺が机を指で叩き、「おい」と声をかけるとゆっくりとこっちに目を向けて俺を睨みつける。


よく見ると綺麗な顔だったけど、なんとも無愛想だった。

俺を睨む目は、やっぱりとても悲しい瞳をしている。まるで今にも泣きそうな目だ。


騒つくクラスの中でも1人だけどこか違った雰囲気があった。



初めて見た時、俺は少し彼女に惹かれた気がした。



「…なに?」


彼女はそう言うとまた窓の外を見る。


「シャーペン貸してほしいんだけど」


彼女は嫌々ながらも自分の手に持っていたシャーペンを俺に渡す。


「サンキュ」



この様子だと俺は早速嫌われたのか…?



憂鬱な気分ながらも授業を受けることにした。