春休みになると、荷物を全てまとめて俺は一人であの街へ向かった。
父さんに渡された地図を見てアパートを探していると、この街はあまりにも変わりすぎていた。
母さんと父さんに連れて行ってもらったデパート。
俺が通った幼稚園。
全て跡形もなく別の建物と化していた。
まるであの頃の思い出を消された様な感覚だ。
街の風景を見ながらしばらく歩くと大きなアパートに着いた。
このアパートの3階の部屋だ。
その部屋は、真っ白な壁に包まれていて一人暮らしには少し広く感じるような空間だった。
窓の外から見えるのは沢山のビル。
その日は疲れたけれど、必要最低限の物は揃えなくてはいけないと、家具を買いに行った。
ベットにテーブルにテレビに食器。
考え出したらキリがない。
そんなこんな家の準備をしているとあっという間に深夜の1時半。
作業は中断して、俺はこれからの事を考えた。
明日は久しぶりに親友の龍平に会いに行こう。
その後は美容室に行って髪を染める。
おれ受けた高校は校則が緩い。
だから人が俺に寄り付かないためにやる。
俺はこの思い出の街に一人で来て
一人で生きていきたい。
だから大切な人なんていらない。
愛なんていらない。
俺はそう思っていた。
そしてゆっくりと目を閉じた。