僕はそれに答える。だけど答えは用意されていない。僕は言葉という箱の、隅々まで手を伸ばす。
「まず」箱の縁に触れる。
「君は僕じゃない」手はやみくもにそこらじゅうを撫で回す。
「そして真冬でもない」僕の手の平は一本のロープを渡っているように、安定しない。
「だから全ては伝わらない。だけど僕は話したい。話さなければ、この物語に終わりはない」