「事故した時のこと、実はユイに聞いてたものとはちょっと違っていたんだ」




「え?」





それって、ちぃちゃんをかばおうとしたって、あれかな?



首を傾げたあたしを見て、ヒロは視線を落として続けた。





「ある人をかばって事故ったんだ。
その人は俺の大切な人で、ふたりで並んで車通りも少ない歩道を歩いてた」



ある人って……ちぃちゃんなんだろうけど。

ふたり?




あたしはなぜか頷けずに、ヒロの言葉を待った。




「気づいた?
あそこカスミソウをつくってるハウスがあったの。
それに気をとられてる千紗と。

サプライズでカスミソウの花束を千紗にプレゼントしようとしてた

裕貴がいたんだ」 



裕貴さん?


ちぃちゃんだけじゃ、なかったの?




「車に気づかずに
花束を持った裕貴にだけ気づいた千紗。

そのまま歩道に飛び出して
慌てた裕貴が間に合わなくて。

チャリに乗ってた俺が、とっさに飛び出したんだ」



「……」



そう、だったの?


見えなかった……。



「別に致命傷なんかじゃなかった。

これは俺の思い込みかもしれないけど。
だけど、俺……目を覚ましたくなかったのかも。
ふたりを困らせてやろうって、そんな感覚だったかもしれない」



そんな……。



「だから、ユイのとこに飛ばされたんだ」