淡い紫のパーカーをはおって
ベージュのパンツを穿いた一際目を引く、背の高い彼。



ドキン



知らない女子生徒に、なにか券みたいなものを渡されているのは。


見間違う分けない。




ヒロだ……。




「……」




ドキン


ドキン




少し、後ろの髪切ったんだね。
前髪の長さは、変えてないんだ……。


クシャリとちゃんとセットしてある髪型に、あたしの知ってるヒロじゃないみたいだ。





久しぶりに見たな……。
2ヶ月ぶり、かも。




女生徒は、ほんのりと頬を赤らめて、まるで逃げるようにパタパタと廊下を走って行ってしまった。


それを見送ったヒロは、ポリポリと頭を掻きながら券にもう一度目を落とした。



「よかったあ、ユイちゃんのクラスどこか聞くの忘れてたから合えなかったらどうしようかと思ってたの」


「え?」


ハッとして顔を上げると、ちぃちゃんが優しく笑ってあたしを覗き込んだ。



「遊びに来ちゃった」



そう言って、小首を傾げてフワリと笑みを零す。
その瞬間、甘い香りに包まれた。


……カスミソウだ……。







――ズキン






胸が、痛い……。