え?
ハスキーな声が、少しだけ離れた場所から聞こえた。
恐る恐る目を開けると、和田君は小首をかしげたままあたしを眺めていた。
と、言うか……
あたしの向こう側。
「……見えないでしょ?」
「へ?」
何が?
今度はあたしが首を傾げる番。
意味がわかんなくて、キョトンとしてしまう。
和田君はゆっくりと足を動かすと、あたしの周りを歩き出した。
「最近、変な現象とかないんじゃない?」
「えーっと……へ、変な現象とは?」
夕焼け空に溶けちゃいそうな、シルエット。
あたしは、ゆっくり歩く彼を目で追いながら、持っていた鞄をギュッと持ち直した。
「たとえば、金縛りとか……もっと言うと見えたりとか?」
「……」
和田君の言葉に、「うーん」とうなる。
どうだっけ?
…………。