「……和田くん」
そう言ったあたしを見て、和田君は満足そうにニヤリと口角を上げると、ストンとあたしの前に飛び降りてきた。
滑らかに降りてきた彼を見て、あたしは目を細めた。
「ねえ、なんでそんなに猫かぶってるの?」
相変らず目にかかるほどの長い前髪をなびかせて、彼は黒目がちの瞳であたしを捕らえた。
「失礼な言い方。 別にそんなつもりない」
和田君はそう言うと、オレンジに染まる空を仰いだ。
「ふーん。 そんなに運動神経いいのに、体育の時間はいないし」
「……」
和田君は、あたしを見ないままフェンスの金網に手をかけると、そのまま校庭を覗き込んだ。
吹き抜ける風が、彼の顔をあらわにする。
……あ。