放課後。


4時をまわると、外はすっかり夕陽のオレンジ色に染まっていた。
お昼のカラフルな色を、オレンジ一色にしてしまう太陽ってすごい。

そんな事をぼんやりと考えながら、あたしは机から鞄を拾い上げた。




「ユイ……あたし、ここで待ってようか?」



奈々子が心配そうにあたしの顔を覗き込んだ。



「平気。 先に帰っててもいいからね」



あたしはにっこりと微笑むと、奈々子に背を向けた。


だって。
あたしには大体わかってるんだ。

あの手紙の差出人。




階段をあがり、見えてきた屋上の扉。


少しだけ錆びていて、ドアノブを掴むとひんやりとした鉄独特の感触がした。






―――キイイ



甲高い音を上げて、重い扉が開く。

丁度正面に沈み行く太陽が見えて、あたしは思わず額に手をかざした。




「……わッ」




小高い丘の上に立つこの校舎には、風を遮るものは何もない。
そのせいで、思ったよりも強い風が、あたしのスカートを容赦なく巻き上げた。



慌てて手で広がるスカートを抑えると、不意に視線を感じて顔を上げた。




「……来ないかと思った」




ハスキーな低音が、なんだか楽しそうに言う。

屋根の上に人影。
彼はそう言って、膝に両手をつくとゆらりと立ち上がった。






「やっぱり、君だったんだ……」