「それにしてもさあ、うちら今年受験なのに、無謀なことしたよね~」


「え?」


「だって、あと3ヶ月もしたら受験じゃん? って……ユイは推薦だっけ?」



ジャキジャキと迷いなく思い切り布を切るこの子は、手芸部の部長もやっていた夏澄(かすみ)ちゃん。

ショートヘアがよく似合う彼女は、そう手を止めずに言った。



「んーん。 あたしはまだだよ」


「そっか、あたしも。 そういや奈々子と大樹はもう決まってんだよね?」


「……うん」






そう言われて、思い出す。

そうだった。

あたしたちは、もうすぐ離れ離れになってしまうって。



その時、ちょうど奈々子と大樹がそろって教室に入ってきた。

笑顔で何やら話す2人。

背の高い2人はお似合いだ。



「おッ。 なんだよ、お前ら。 仲良く一緒に登校ですか? 熱い熱い~」



なんて、冷やかす男子の声が飛び交う。

それに反論して、「うるせぇな。 いつもの事じゃん」って言った大樹は、真っ赤。
隣の奈々子もピンク色に頬を染めるとキョロキョロと教室を見渡した。



「おーい、奈々子~こっち!」



夏澄が手を上げると、奈々子があたし達に気付いた。



「おはよ、夏澄。 ってかユイ、置いてくなんてひどいじゃん」



鞄をドカッと床に放り投げて、奈々子はあたしたちの間に座った。



「ごめーん。 つい、ね」



そう言ってポリポリと頭をかくと、奈々子は小さく「ありがとね」と言った。







……。


2人がいい雰囲気なのは知ってる。

大樹の態度も少しずつだけど変ってるもんね。



よかった……本当に。