覚えてるわけない……。

あたし、なんか変なものがついてるのかも。

ヒロはきっと、それが気になってるんだ。


……そうだ。

そうに決まってるじゃんっ。


あたしってば、なんつー身の程知らず。

自惚れもいいとこだ。


でも……。
そんなに見られたら、恥ずかしくて……死んじゃう。

……。

…………。


あああ!



「……あのっ!」


耐え切れなくて、気がついたらあたしは顔を上げていた。



……ドクン。


だけど、あたしのその勢いも、ヒロを見上げた瞬間、どっかに飛んでってしまった。


「なに?」


そう言って首をほんの少しかしげたヒロ。
真っ黒な髪が、ヒロの動きに合わせて揺れた。


長いまつ毛の奥に、切れ長の瞳。

その中にあたしの顔が映りこんでる。


……うぅ。


どうしよう。


頭、真っ白。



あたしは、時間も忘れてヒロを見つめてた。

それは、ほんの一瞬だったのかもしれない。
でも、あたしは……あたしにとっては……永い、瞬間。


「……」

「…………なに?」


低くて、喉の奥から搾り出したみたいに、かすれた声。

俄かに近づいた距離。



――……胸が潰れちゃいそうだった。