「ひゃっ!」


突然声をかけられて、思わず体が小さく震えた。
そのせいで、変な声出しちゃった。


ぎゃーん!

もう、最悪~。


恥ずかしくて、びっくりして涙目のあたし。

だけど、そんなマヌケな自分が知られたくなくて。



「あはは。 別に噛み付いたりしないよ」


背後から楽しそうに笑うヒロの声。

その声色が、すごく優しくて……
ダメなのに、イケナイことなのに。

……ドキドキする。



「ほら、こっち」

「……」



そう言ったヒロの声に導かれるように、あたしはゆっくり振り返った。

その先にいたヒロは、ユーレイの時みたいに、あの時みたいに。



まるで子供のように、悪戯に笑ってた。



ソファに腰を落として、その隣をポンポンと叩き“ここへ来い”と言っていた。



どうしよう……。

あたし、いいのかな。


なんだか、その場所が『特別』な場所のような気がして。



おずおずと近づいて、遠慮がちにヒロの隣に座る。


「……」


そんなあたしを、何も言わずただ、ジッと見つめるヒロ。


ひんやりとした室内で、あたしの体温だけがさっきから上昇してる。

スカートを握りしめた手は、汗びっしょり。


綺麗に磨かれたテーブルを意味もなく凝視する。


「……」


なんで……!?

なんでよ、ヒロ!


なんでそんなに、あたしを見るの?


いつまでもヒロの視線の呪縛から解放されなくて、あたしは身動きもとれなくなってた。