「お願いします…」と頭を下げる彼の側に寄っていった。

一緒になって頭を下げると、純也も膝に跨ったまま礼をした。



「クスッ」


小さな母の笑い声が響いて、「ゴホン!」と咳払いをする父の声がした。

「物好きな人だな…」と呟く兄の声が聞こえ、それに同調するかの様な父の声がしてきた。


「どうか頭を上げてください。下げなければならないのはこちらの方です。こんな世間知らずな娘と難しい孫を託さなければならないのですから…」


顔を上げると、テーブルの向こうから父が頭を下げた。
旋毛をこちらに向けて、ぎゅっと拳を膝の上に乗せている。



「…娘と孫を宜しくお願いします。貴方の家族として、末長く大切にしてやって下さい」

「してやってくださーい!」


ふざける様に真似をする純也を膝から取り上げた。
ケラケラと笑う無邪気さに目を向けた彼は、それから父と兄を見直した。


「はいっ!」


力強い声で返事をして、ぎゅっと奥歯を噛んでいた。
その横顔に見える眼差しは、今まで見てきたものの中で一番力が込もっていた。


格好いいな…と思いながら見つめていると、純也の視線がこっちに注がれていたらしく、「お母さん、お母さん!」と、せがむ様に服の袖を引っ張られた。



…それから遅めの夕食を堪能し、ゆっくりと熱いお風呂に入ってもらった。


兄のパジャマを用意して着てもらい、同じ部屋で休むことになった。