ゴクッと喉を鳴らし、息を一つ吐いてから声を出した。


「…来未さんと、結婚を前提にお付き合いをさせて頂きたいと思います。私の両親は既に亡くなっているので、こちらへ挨拶には来れません。兄弟や姉妹もおりませんし、親戚の叔父叔母ともどちらかと言うと疎遠な状態です。そんな状況ですが、是非とも来未さんと一緒になりたい。…純くんの良い父親にもなれたら……と、思っています」



「…しかし、純也は普通の子とは違いますよ⁉︎ 」

「血も繋がらない人間同士が上手くいかないことは五万とこの世に転がってる。それなのに、敢えてこいつ等と一緒になろうと思わなくても……」



「冬吾っ!」


口を慎めとばかりに母親が声を上げた。
ビクッとなる孫に驚いて、「ごめんね〜」と、猫なで声を出した。



「純くん…このおじさんのことをどう思う?」


話を切り替えるかのように孫に問いかけ、父親は「ん?」と甘い顔を見せた。


湯気の向こうから見つめてきた瞳は、彼女とよく似ている。
直ぐに目線を背けられ、祖父の方をチラ見して呟いた。


「バクさんは優しい人だよ。僕のこと「いい子だね」って、頭を撫でてくれたんだ!」


たった一度しかしていない行為を、彼はずっと忘れずにいてくれた。
彼女は子供の頭を撫で、「そうだったよね」と優しく声をかけた。


立ち上がった子供が俺の方へと走り寄って来た。
無遠慮に膝に上がり、「中身を掬うね!」と箸を持った。