ーー話すなら故郷のことだ。

捨てようと思った故郷へ帰って今、どんな思いでいるのか。

俺はどうしたらいいのか。

あの懐かしい海へ行って、何を掴めというのか。



聞いてみたい。彼女の気持ちを。

これから先の俺達の生活もーーーー。






封筒をポケットに突っ込んだ。

胸元に入れていた電話を取り出し、編集長へと電話をかけた。


彼は話を聞いて、「2、3日の休みをくれてやろう」と言った。


大袈裟にお礼を述べて、その足で空港へ向かう。



運良く残っていた空席のシートに座り込み背中を凭れた時、窓の外には夕焼け雲が棚引いていた。

筋のように広がるオレンジのラインに目を配りながら、一文字一文字、丁寧にメールを打って送った。

程なくして戻ってきた文章は、たった6文字の言葉から成り立っていた。





『待っています』



余計な感情も入らない文字なのに、その一言だけで彼女の思いが伝わった。


電源をお切り下さい…というアナウンスに従ってオフにしながら、そのたった6文字の言葉を胸にしまい込んだ。

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