「来未さんに手紙を書く機会もあるでしょう?その時でいいから許可を得てもらえない?実名は出さないし、芽衣ちゃん自身のオリジナルも漫画の中に織り込む。だからお願い!是非描かせてやって欲しいの!」


両手の指を絡ませるようにして手を組まれた。
祈るような体勢の2人に目を向け、「構いませんけど…」と承諾した。


「彼女にもきちんと了解を得てね!たった1通の手紙の始まりは、来未さんの思い立った行動からなんだから」


それを言うと断るのではないか…と思われた。
「任せておいて下さい」と返事をしながら、どう切り出そうか…と考えた。


「その漫画を最後に私は筆を折るかもしれないわ。だから、思いきりいい作品に仕上げるつもり!」


「芽衣ちゃん!」
「先生⁉︎ 」


驚く俺達に目を向け、先生はくすり…と笑った。


「私もいい加減、歳なのよ?長いこと机に向かっていられるような我慢強さはもう無いの。指だって力が入りづらいし、若い頃と違って細かい部分も描き難くなってる。綺麗な作品として絵が描けてるうちにやめてしまいたいと何年も前から思ってたの。昨日や今日の思いつきで、言ってる訳じゃないのよ」


お茶を淹れ直してくるわね…と席を立った。
部屋を出て行く妹の背中を目で追いかけて、萌子さんはふぅ…と息を漏らした。