「これからどうするの?」

「来未さんとは一緒にならないの?」


知りたがりの人達は、そう言って深い質問をしてくる。

言葉の上でも約束を交わしていない人との未来を聞かれ、「どうしましょうか…」と呟いた。


「来未さんは暫く実家で暮らしたいみたいでした。子供さんを4月から支援学級に通わせるつもりみたいだし、そうなると、なかなか学校も変わりにくいですよね。特殊な子だから、急激な変化にもついていき難いし……」


「でも、中学校になってから変わるのはもっと難しくなるわよ?多感な時期を迎えるし、親も何かと大変な時期になるし」

「反抗期とかも絡んでくると厄介よね。小野寺さんもフーン!とかされちゃうんじゃない?」

「鉄は熱いうちに打て!よ。何事も」


昔ながらの諺を言って、萌子さんは俺の顔を拝んだ。
津軽先生は肩を竦め、「確かにその通りね」と賛同した。


迷うように視線を彷徨わせると、津軽先生は「気分を変えましょう…」と言って仕事の話を始めた。


3冊目のセレクトブックに載せる作品を大まかに決めた後、俺に「お願いがあるんだけど…」と囁いた。



「お願い?何でしょうか?」


目配せし合う2人の顔を見ながら瞬きした。
先生は照れくさそうな顔をして、ふふふ…と小さく笑った。


「あのね、2人のことを漫画に描いてみようと思うの。たった1通の手紙が結んだ縁でしょう?何だか素敵だなぁ…と思って。こんな気持ちになれたの久しぶりなのよ。若い頃と違って、今はアイデアも乏しくなってるから」