「いらっしゃ〜い!長いこと待ってたのよぉ!」


姉に比べると素直な性格の妹は、そう言って屈託のない笑顔を見せた。


「ほらほら早く上がって!報告してちょうだい!その後、どうしたかを」


せっつかれる様にして靴を脱いだ。
紺のスリッパに足を通し、裏庭の見える部屋へと通された。



既にお茶の準備はしてあった。

ティーカップに注がれた紅茶の匂いを嗅ぎながら、先生は「何から話してもいいわよ」と言った。



「では、仕事の話から…」


「「それはダメ!」」


2人が声を揃えた。

3人で目を合わせ、少しだけ笑い合った。



「今日はいつもよりマシなんじゃない?」


萌子さんはニヤつきながら俺に言った。


「たまにはやり返さないとですね」


言葉を返すと、側にいた先生がジリジリと身を捩り、「いいから早くっ!」と急き立てた。



「すみません。実はですね…」



あの日の話から始めた。
彼女の住んでいたアパートの前で、あの男に会った話だけは控えさせてもらった。


先生達は神妙な顔つきで聞いていた。

彼女が号泣した話を聞いて、先生はそっ…と目頭を拭った。



「いろんな意味で、我慢をし続けてきたんでしょうね……」

「本当に、苦労を顔に出さずにいたんだわ……」


それぞれの感想を述べてこっちを振り向いた。

その視線に目をやり、「何ですか?」と声をかけた。