「綾香こそ、毎日こんな所で俺みたいなオッサンと会ってて良いのかよ」


からかうみたいな眼を向ける奏次郎に、私は少し悔しくなった。
だから思わず投げやりに答えてしまう。


「他に会いたい人なんて居ないもん。彼氏も居ない。友達も、家族も、会いたくないもん」


静かな風が私達の間を通り過ぎる。
奏次郎の長い前髪が風に流れた。

私はただ惨めな気持ちでクッと上を向く。

沢山の愛を持ってる奏次郎の前では、私はなんてつまらない人間なんだろうって感じたから。

悔しいよ。
なんで、私はこんなに汚いの。