それでも私は。

 秋斗の手を振り放そうとする。

「放して。だって、こんなの駄目だよ!

死んでいい人なんていないもの!」

 必死に納得させようとした。

 今こうしてる間も、殺し合いなんか起

きてしまう。いとも簡単に。

「無理なんだ。もう。あの傷は・・・」

 目を伏せた秋斗を見て、私はハッとし

た。

 言葉を濁した秋斗の言いたいことは、

何となく分かる。

 秋斗の親は、どっちも医者だ。だから

秋斗も医者になると聞いたことがある。

 だから、あの傷の具合と出血量で分か

るんだ。

 圭はもう、助からないと。