数時間前、イギリス、テムズ川の河口に位置するマンセル要塞。

第二次世界大戦の真っ只中である1942年に建設されたこの要塞は、4本の支柱で支えた砲台が中央に1つ、それを取り囲むように5つ存在し、それぞれは連絡通路で繋がれている。

180ミリカノン砲や12.7ミリ重機関銃で武装し、砲台の屋上にはヘリポートが備えられており、ヘリの離着陸が可能。

内部はそう広くはないが、改良して居住区や工場として使用できるようにしてあり、現在はPMSCs(民間軍事警備会社)であるデュラハン社の拠点として利用されている。

その司令部。

「アメリカ軍の無線を傍受したの…」

オリーブドラブのベアトップ、ホットパンツを着用した蒼い髪の長身の女が言う。

デュラハン社のコントラクター(戦闘要員)、コートニーだ。

「おいおい、コートニー…」

迷彩色のACUを纏い、葉巻を咥えた隻眼の男が、机に両足を上げて座ったまま呟いた。

このデュラハン社のボス、ゴースト。

戦場ではその名を知らぬ者のない傭兵、しかしその姿を見た者は誰もいないという事から、そのコードネームがついた。

嘗てチェチェンで拾ったコートニーは、彼の養女だ。

「幾らマットの事が好きだからって、年がら年中盗聴はいただけないな…ストーカーだと思われるぞ」

「そんなんじゃないの…!」

ほんのりと頬を赤く染めたコートニーは、彼女にしては強めに否定した。