いきなり、マリオンは鉄格子の隙間から手を出してデッキブラシを摑み、バニングから奪い取った!

そしてそのデッキブラシの先端でバケツを引っ掛け、引き摺り寄せる。

バケツに掛けられていたゴム手袋を摑んで、マリオンはニヤリと笑った。

狙いは、このゴム手袋だった。

この第4独房棟の鉄格子には、電流が流れている。

しかし、このゴム手袋があれば。

マリオンはゴム手袋を両手に着けると、口の中から針金を出した。

彼は奥歯の1本に、収納スペースを持つ特殊な歯を埋め込んでいたのだ。

絶縁体さえあれば、こちらのもの。

マリオンはピッキング技術で鉄格子を開錠すると、独房から難なく出てきた。

彼は脱獄を狙っていたのだ。