「終わったら壁のブザーを押せ」

そう言って看守達は戻っていく。

監視すらしてくれない。

これでバニングは、第4独房棟に取り残された。

猛獣の檻に閉じ込められた気分だ。

嫌な汗が背中に流れる。

こんなに暑い独房棟の中だというのに、汗が冷たいのは何故だろう…。

ともかく、清掃はこなさなければならない。

デッキブラシとバケツを持って、バニングは歩き出す。

ゆっくりと、独房棟の奥へ。

殆どの独房は空き室だ。

手前から左右4つまでは、空き室だった。

つまり一番奥の左側の部屋に、ここの『住人』がいるという事になる。

…近付くにつれ、聞こえてくる荒い息遣い、衣擦れの音。

そして遂に。

バニングは、ここの住人と対面を果たした。