「そういえば、心電図の検査結果だけど、
異常はなかったよ。
一先ず、様子見だよ。」
「良かったぁ。結果が悪くて入院が長引くかとおもったぁ」
「もう大丈夫。
だけどまた起きたらちゃんと言うんだよ。」
「はぁい!!!」
そしてとうとう、一週間後に退院が決まった。
その夜、お母さんがやってきた。
「綾ちゃん、もうこれで長い入院生活とさよならできるわね。
本当によく頑張ったわね。」
「うん、たけど、少し心残り。」
「だって、亮先生や武田先生と会う機会が減っちゃうから。」
「あ、それなら大丈夫!
剛さんとは、そろそろ一緒に生活したいって思ってたの。
だから、その・・・・・・。
本当の親子三人で暮らしましょう。」
お母さんと武田先生がうまくいってることは、何となく気付いてた。
だけどまさか、退院後に武田先生と一緒に住むとわ。
まぁ、いずれ結婚をしてもいいって許可したのは私だしね。
そして退院の日。
「綾ちゃん、おめでとう!」
そう担当医の亮先生と、これから一緒に住む武田先生と看護師さんに見送られ、病院を後にした。
亮先生とのことは、何も進展せず、少し進展することを期待してたのに。
残念。
だけど最後に、
「綾ちゃん、健診は一週間に一回、忘れたら迎えに行くからね!!!」
そう亮先生に言われると、健診が楽しみでもあった。
今日から退院。
これからは三人の生活。
少しだけ緊張した生活になりそう。
武田先生は、入院中ほぼ毎日いたから、慣れてはいるけど、
プライベートではきっと今までとは違うと思う。
私が気を遣っても、武田先生に悪いから、まぁ今まで通り。
それよりも、今まで食べられなかったもの。
行けなかったところに行きたい。
私の心は楽しみでいっぱいだった。
「綾子っ!退院おめでとう!!!」
お母さんと武田先生と初めて三人での食事。
私が最近食べられなかった料理が食卓を囲んだ。
「わっ!!!すごすぎる!
ヤバイヤバイ!」
私は思わず興奮しちゃった。
だって、今までずっと食事を制限されてたんだから。
退院前の数日は、味付けも食べるものも普通の人といたって変わらずに食べてきた。
それでも食事に並んだ料理は素敵だった!!!
「綾ちゃん、退院おめでとう!」
そう言いながら、武田先生が私にプレゼントをくれた。
私はお礼を言って、すぐにプレゼントを開けると、
そこには可愛いい時計が入っていた。
「すごぉい!可愛い!」
「綾ちゃんは来年には高校を卒業でしょ?
きっと時計は必要だと思ってね。」
「本当にありがとうございます、先生。」
そう返事をすると、お母さんが私をみた。
「綾、その先生っていう呼び方は、家では変えなさいよ。」
「さつきさん、いいんだよ。
綾ちゃんには服部さんがいるんだから。
私は今までどおりでいいんだよ。」
と武田先生が答えた。
確かに、そんなことを考えたこともなかった。
呼び方ね・・・・・・。
その夜は三人で素敵な時間を過ごした。
自宅にいる武田先生は、至って病院と変わらなかった。
ただ寝巻に着替えると、医者には見えなかった。
普通のおじさんって、感じ。
だけど、職業柄かきっちりとしてるところもあった。
そんな三人での生活が一週間ちかく経ったある日、
「綾ちゃん、明日何の日か知ってる?」
「えっ?」
「綾ちゃん、もう忘れてる・・・・・・。
寂しそうにしてるよ、各務先生。」
ハッ
「忘れてた。」
「あ~あっ、各務先生、可哀相。
明日を楽しみにしてなのにぃ。」
もうっ!
すぐそうやって亮先生のことを話すんだからっ!
「ちゃんと忘れないようにね。」
健診当日。
「服部さ~ん、服部綾子さ~ん。」
そう看護師さんに呼ばれて診察室に入った。
「綾ちゃん、久しぶり。」
「おはようございます。亮先生っ!」
と私が言うと、一瞬間ができた。
「どうだった、一週間?」
「楽しかったです。」
「いや、そうじゃなくて、体調は?」
「あっ!!!」
恥ずかしっ!!!
看護師さんも笑ってる。
「体調も順調でした。」
「そっか、それなら良かった。」
そんな会話をして、すぐに診察に入った。
入院していたときと違って、外来でしか会えないと、なかなか話す時間がないんだね。
ちょっと寂しい気持ちになっていた。
そして診察もすぐに終わり。
診察後に血液検査もした。
結果はまた来週。
退院後初の健診はすぐに終了~。