「…限りなくかなし。はい、では!  この かなし に漢字を充てるなら、どの字がふさわしいかな?  分かる人!」


この間から、国語では古典をやっている。でも、あまり得意ではない。


誰も手を挙げない。



「別に間違ってもいいのよ?」


先生がハードルを下げようとする。


“別に間違ってもいい”、どの先生がよく言う言葉。


でも、完全な的外れでもいいから答えなさい、という意味は入っていない。それくらいは僕にも理解できる。


つまり、“答え”として充分成り立つ範囲にある場合にのみ、その回答を答えるのであって、その範囲になければ、人はそう簡単に答えようとはしない。例え、何らかの回答が浮かんでいても。





…って、そんなこと考えている場合ではなかった…。



かなし、か。先生が聞くくらいだから、“悲し”ではないな。



うーん…。