なんだかんだ、私達は遊園地を満喫していた。
「次はお化け屋敷!」
「え、ちょっと、伊津希お兄ちゃん!?」
私の手を強く引く。
伊津希お兄ちゃんは、23歳成人男性とは思えないほどのはしゃぎっぷり。
私たち以上だ。
悠太はそれを不満げに見ていた。
なんだか申し訳ない気持ちになってきた。
伊津希お兄ちゃんは、私の手を握りしめたまま、お化け屋敷の列に並んだ。
「3人で回るのはつまらないし、ここは俺と千代の2人で回ろう。悠太は1人な」
「え?」
「伊津希にぃが何を考えてるのかは知らないけど、それだけはダメだから」
「そう言うと思った。2人は付き合ってるんだもんねー」
わざと強調して言う。
「そうだよ。付き合ってる。だから尚更譲れない」
反面、悠太は至って真剣だ。
「まあ、最初からそのつもりだ。2人で行ってきな」
そう言って、伊津希お兄ちゃんは私たちの背中を押した。
「……行こう、千代」
順番が回ってくると、悠太は私の手をギュッと握りしめた。
私もそれに答えるように、握り返す。
作り込まれたお化け屋敷は、例え作り物だとしてもおどろおどろしさが滲み出ていて怖い。
そういえば______
「悠太って、お化け屋敷ダメじゃなかったっけ」
心做しか、悠太の手が震えている気がする。
それに、肩が縮こまっている。
「そ、そんなことな___ひぇ!?」
突然現れた手に、完全にビビってる。
握った手が震えてるもの。
「……だよね」
昔からそうだった。
こういう時は、手を強く握ってあげるのだ。
「……千代……」
「大丈夫だよ、ね?」
「うん」
時折、後ろから伊津希お兄ちゃんの悲痛な叫びが聞こえた。
それを聞いて2人でふっと笑う。
そのお陰か悠太の震えはいつの間にか収まっていた。