「はぁ…」

「決意は出来ましたか?王子様」

陸に連れられてどのくらいの時間が過ぎただろう

また陸に手を握られ

ついた先は赤を基調とする

がっちりとした石造りの大きな建物

カーテンで仕切られた場所の内側に立つ

「どこだよ?ここ?」

しっと指を立て騒ぐことを止められた翡翠の視線の先は椅子に座り

目を閉じた姿の王がいる

「僕の本気をみせましょう」

そう言った陸は音もなく王に近づき

光りの剣を王の胸元に刺す

翡翠ははっと息を飲むと同時に

目を閉じたまま王は動かず、身体が椅子からずり落ちる

「ちょっと何してんの?あんた…」

翡翠は青い顔で陸の元に向かう

「死んではないですよ。眠りについてもらっただけ」

首に振れると確かに脈はふれる

生きてはいるようだ

「ここからよく見てるといい」

そう言った陸は

翡翠に王不在後の貴族の動きを見せた

王がいなくとも腐った貴族たちは

我がもの顔で政治を行い

平民を同じ人間として扱わない

王が死にそうであることも厭わない

これを見せることが陸の最大の目的だった

翡翠の意識を次代の王として芽生えさせること

それは見事に陸の思い描いたものへと変わって行く