港の一角に座り翡翠を待つ陸

帽子姿の華奢な体を見つけるとすぐに近づく

「おー少年!」

「またあんたなの?」

「今日はちょっと話しがあるんだ」

そう言って陸は翡翠の手を握ると

ぱっと景色が変わり

灰色の何もない空間へと翡翠を連れ移動する

「なっ、なんだよ。ここは」

「僕のパーソナルスペース?ってとこかな?
僕の意思がないとこの空間から出ることは不可能だね」

「はぁ?」

キィーンと光とともに金属音が響き

陸は光の剣を翡翠に向ける

「は?何なのほんとに?」

陸は翡翠の帽子を剣で弾く

翡翠は微動だにせずにその場に立つ

帽子の下に現れたのは見事な黄金に輝く金髪の髪

拘束の魔法でからだに縄をつけられた翡翠は

されるがままの状態で

驚きも怒りもせずに

陸によって浮かびあがった肩の紋章をみる

「やっぱりか、王子様…」

「なんのこと?」

「しらばっくれても無駄だろ?その肩の紋章は王家の者が生まれた際にはつける身分証だ
その髪の色も王族である証となる」

「俺は平民だ。今までもこれからも」

「僕は正直、王が誰であろうが関係ないし
忠誠を誓うなんてこと考えたことない。
王子の存在すらどうでもいいこと
だ。しかし、今の王政には無理がある。王が頂点であるべき位置に腐った貴族どもがいることにより国は傾き始めている…」

「だから何だと言うの?それを俺が正せと?
俺は今まで平民として生きてきたんだ。それを王族に生まれたから、王族としてこれからを果たせなんてふざけた話だね!生まれた瞬間に捨てられたのに!今更戻れなんて誰が言えんのさ」

「平民として生きてきたからこそ分かるだろ?
どんなに生きづらい世の中ってこと
それを変えることが出来る権利を持っている君が放棄したら、より生きづらい世になるだけだ」

「…あんた何なの?何がしたいの?」

「僕は、新しい世界が見たいだけ」