薄い和紙に細い裂け目が入り、万物の形を成しながら色づいていく。

数秒もかからないはずの式神の美しき〝変化〟がスローモーションで見える。

そして、それらは、すぐに私を吞み込み、追撃を始めた。

横目で周囲を確認しながら、近づいた式神を叩っ斬っていく。

私の周りを飛び交う式神の数があまりに多いように思えた。

外からは、蚕の繭のように見えているに違いない。

それだけの量を刀一本で裁くことは、不可能だった。

斬り漏らしたモノが、まだ血の滲む手の甲の傷や山道で痛めた足首を容赦なく狙ってくる。

その度に足元がふらつくのを感じたが、意地で身体を奮い立たせた。

弱い所を突くような闘い方は、清宮らしくないように思えた。

「いっ…たぁ」

痛みに思わず、声を漏らす。

かなりの妖力を身体に取り込んでいるはずだったが、どうしても全ての式神に手が届くことはなかった。

それでも、世界は、スローで動き続けているようでもどかしさを覚えた。