死を覚悟したその瞬間、柄を握り締める右手に一陣の風が走った。

直後、右手の甲に痛みを感じたのだった。

〝妖刀望月〟が手から離れる。

足の方でカチャンと金属音がした。

紅く色づいた式神がハラハラと目の前を舞っていた。

それに手を伸ばした右手に、筋肉に真っ直ぐ沿うような深い傷が見えた。

「神崎、勝手に死ぬのは、かまわねぇが、最後に俺と勝負しろ。」

声に顔をあげると、清宮が目を細め、私を鋭く睨んでいた。

「私は、自分の犯した罪で無罪である者が裁かれることが許せない。裁かれるのは、罪を犯した私自身よ。」

私も、負けじと睨み返す。

「本当に自分で斬れんの?」

清宮の言葉に息が詰まる。

私は、本当に斬ることができた?

動揺で早まる胸に手をやった私に清宮が言う。

「お前が俺に勝ったら、俺がお前の首、斬ってやるよ。この勝負、受けるか?」

「上等よ。受けるわ。」

清宮の挑発に、私は、口角をあげ、微かに微笑んだ。

最後に清宮と一戦交えるのもいいかもしれない。

そんな私に清宮が言った。

「俺が勝ったら…お前には、生きてもらう。」