私は、首筋に〝妖刀望月〟の刃を突き立てた。

〝妖で妖を斬る〟妖刀で斬られたモノの行き場は〝地獄〟。

死んでもなお続く苦しみを振り払うかのように自嘲の笑みを湛える。

しかし、刀の柄を握る手は正直でカタカタと震えていた。

首筋から流れ出た深紅の血が妖刀の刃を伝っていくのが目に入った。

「腹を括らなくちゃね…」

自分自身に言い聞かせるように呟く。

それから、これでもかと言わんばかりの大声で腹の底から叫んだ。

「今すぐに無駄な戦は、止めなさい。」

その場にいた全員の目が、こちらを向く。

私は、有終の美くらい飾らせてよ、と微笑んだ。

「正義の名のもとにに裁かれるのは、悪を斬ることができなかった私です。陰陽道の名をもって善を裁くことは、許されない。神崎小夜、私こそが悪である。私は、私自身を裁きましょう。」

刀を持つ手に力を込める。

「神崎っ」

遠くで聞き慣れた声がした。

そして、私は、刀を首筋に食い込ませた。