「蒼天？」


将軍は驚いた様な、戸惑ったかの様な様子で目を丸くし、クリス達を見つめて呟く。


「シュバルツとアルは陛下のとこ。ロックとレオンは…暴れてこい」


「ハッ！暴れて来い、か！行くぞレオン！」


「俺は控え目に行きたいんだが…」


二人が同時に強く地面を蹴る。それはまるでその場から消えた様な光景となった。


刹那、暗殺者が一人宙を舞う。


直後にジェン・リンドの周囲を囲む部隊の人間が大勢巻き起こる煙の中から飛ばされた。


煙が止んだ頃には全ての敵が倒され、将軍の喉元にはロックの脚が、腕はレオンによって拘束されていた。


一分も経たない内の敵部隊殲滅。


この状況に、扉の近くにいた二人の騎士は口をあんぐりし、目をまん丸にさせていた。


「チェックメイトだ」


「降伏しな」


レオンは空間から槍を換装し、敵将の目先に切っ先を置く。


将軍への完全な拘束の完成だ。


それを見た誰もがこれで終わりかと思ったが、ジェンから笑みは消えなかった。


「何が可笑しい？」


その不気味さに、クリスが咄嗟に尋ねた。


「この馬鹿さ加減に、だよクリス君。君達は終わったと思ってるが、私は捕まる気などない」


ジェンを中心に一陣の風が吹き荒れる。


なんのかんの拍子も無しに吹く風の正体にルーシャが気付き、声を荒げた。


「離れなさい！！」