「でもピンチには間に合ったよ、クリス」


まだ幼い10歳位の男の子は、クリスの隣に立ってそう言った。


「まぁ…確かにな」


二人の見つめる先では、暗殺者が大男に慈悲のカケラもないまま殴られていた。


「成程。こりゃ酷い」


「だから私達を呼んだのですね、クリス」


眼鏡をかけた少し細目の紳士と、フード付きのローブを身に纏った優男が、ゆっくりとクリスの下に近付く。


「のんびりしてる場合かレオン、アル」


レオンと呼ばれた男は何も言わずにスーツから煙草を取り出し、一本口にする。


「禁煙だよ」


「おっと…悪いな、シュバルツ」


シュバルツと呼ばれた少年が、レオンから煙草を取り上げると、その後ろから大男が姿を見せた。


「はっ!手応えねぇなオイ…。緊急招集っつうから、期待しちまったじゃねぇか」


二人の騎士を襲った暗殺者を右手で引きずりながら、屈強な身体付きのバンダナの男は、不満そうに言う。


「これからが本番だよ、ロック」


「だといいけどな」


そう言ってロックは右手の暗殺者を、将軍を囲む暗殺集団の前に放り投げた。


それを見た将軍は少し苛立っているのか、深く葉巻を吸い、大きく煙を吐いた。


「貴様ら一体…」


ロック、レオン、シュバルツ、アルがクリスを取り囲むように集まる。


「“蒼天の翼”だ。ジェン・リンド!貴様を逮捕する!」