「君の様な野蛮な者まで宮殿に招待されたのかね?」


葉巻をふかす中年の男は、不敵な笑みをクリスに零した。


クリスは男を見据えながら、扉を切ったその二本の太刀を左腰の鞘に収める。


「ヨーツンヘイム王国ガーデン騎士団第7部隊クリス・ヴァンガードだ」


納刀した刀が鞘に当たる。その音が鳴ると同時に、あからさまな殺気を飛ばしながらクリスは男に答えた。


「ヴァンガード…?」


男はクリスの姓にピクリと反応を見せる。


クリスの放った殺気は風の様に飛び、男の葉巻から立ち上がる煙を激しく揺らした。


「私はルグラン帝国…帝国陸軍第16師団団長、ジェン・リンド。将軍だ。あと…殺気を抑えてくれ。部下が驚いているよ」


言葉の通り、彼の周りを囲む暗殺部隊はクリスの殺気に畏れているのか、圧倒され、身動きが取れていなかった。


だが当てた筈の殺気は一番の標的である敵将に届いている気配は無い。


にもかかわらず、殺気を恐れているかの様な言葉にクリスは苛立ちを覚えた。


「大根役者め。貴様ら帝国が何か企んでるのは既に把握済みだ!何故魔女狩りを始めた?」