『…いけませんよ、ジェイナ』


唇を噛み締めるジェイナに、ルーシャが言葉をかける。


『魂が消滅した相手を
 再び現世に返すのは
 我々の世界の均衡を乱します』


正論を突き付けられ、俯くしか出来ない。


『だけど
 …リノアとクレアはどうなるのさ』


『二人は十天
 …覚悟を決めてますよ』


『…覚悟って
 そんなに強いのかい?
 あいつらの弟なんだよ?』


ジェイナが歯を食いしばる。


ジェイナの優しさを十分知っていたから、ルーシャは何も言う事が出来なかった。


『…ゴメンよ、ルーシャ
 私は…ただ…』


『いいんです、ジェイナ…
 貴女に定型文しか言えない私を
 許して下さいね?』


ルーシャに、立場上の言葉しか言えない事に気付く。


本当は言いたくない事も言わなければならない立場に置かれているルーシャが、少し可哀相だった。


『クリスは…預かります
 部隊は…再び戦場へ』


『ルーシャ…?』


微かに声が震えていた。


『…わかったよ』


おそらく、哀しみに堪えられなくなったのだろう。


敢えて何も言わずに、静かに通信を終えることにした。