飛空挺ニルヴァーナに十天の二人を含む全員を乗せ、ロックは複雑な表情でエンジンをフル回転にする。


コクピットにいるレオン、シュバルツ、アル、ロックの間で言葉が交わされない。


ニルヴァーナの奥のベットでは、アスカが“樹の魔力”で治療を続け、隣でアリスが生気の無い瞳に涙を浮かべていた。


コクピット入口の通信機にはジェイナが張り付いている。


『…あぁ、すまないねルーシャ』


通信機の先からは穏やかでも哀しみに満ちた声がする。


『…いいえ、ジェイナ』


『ルーシャ…アスカはあんたが
 救いの手と言ってたよ?
 …死んだ者を生き返らすのは
 禁忌じゃないかい?』


女王は暫く黙り込む。


『まだ魂が有る
 または闇に包まれた状態なら
 禁忌を侵す事はありません』


…魂の存在。


確かにアスカの口からは、まだ死んでいない、と聞いた。


もしも禁忌を侵す事なくクリスを生還させれば、十天の長を失わずして、最高の騎士を再び戦場に送り込める。


だが、もしも魂が消滅すれば、連合軍は大きな痛手を負うだろう。


『万が一の時は私がやる…』


それがジェイナの答だった。